食品加工の現場において、利益を直接的に圧迫する要因の一つが「過剰除去」です。原材料の高騰が続く中、「いかに可食部を多く残すか(歩留まりを上げるか)」は、経営課題として重要度を増しています。
しかし、現場レベルでは「皮のむきすぎ」を減らすことは容易ではありません。形がいびつな変形果の処理や、厳しい品質基準への対応に追われ、結果として多くの「食べられる部分」が廃棄されています。
「『皮が残っているとクレームになるから…』と、念のために厚くむいてしまう気持ち、よくわかります。特に1日中作業して疲れてくると、どうしても手元が安定しなくなりますよね。」
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過剰除去とは、食品加工や調理の過程で、野菜の皮を厚くむきすぎたり、本来食べられる部分(可食部)まで過度に取り除いて廃棄したりすることです。農林水産省が定義する「食品ロス」の3大要因(直接廃棄・食べ残し・過剰除去)の一つに数えられます。
家庭での調理だけでなく、特に食品工場などの業務用現場においては、歩留まり(ぶどまり)を低下させ利益を圧迫する大きな要因となっています。
過剰除去は、単に「皮むき」だけの問題ではありません。以下のようなケースも含まれます。
食品ロスは大きく「事業系」と「家庭系」に分かれますが、過剰除去はその両方で発生しています。特に食品製造業や外食産業においては、「歩留まり(ぶどまり)」の低下要因そのものと言い換えることができます。
例えば、環境省の調査などでも、調理くずの中に多くの可食部が含まれていることが指摘されています。これは単なるゴミの問題ではなく、仕入れた原材料コストをドブに捨てているのと同義であり、企業にとっては「利益の流出」です。
家庭での過剰除去は個人の意識や調理スキルに依存しますが、業務用の現場では事情が異なります。
工場や加工センターでは、「一定の品質基準(規格)を守らなければならない」という制約があります。「皮が少しでも残っていたらクレームになる」というプレッシャーがあるため、作業者は安全マージンをとって厚くむかざるを得ない状況が生まれます。
つまり、業務用の過剰除去は、個人の技術不足だけでなく、現場の構造的な課題として捉える必要があるのです。
「もったいないから薄くむこう」と頭ではわかっていても、実際の現場では過剰除去が常態化してしまうことがあります。なぜなのでしょうか。アストラが多くの食品加工現場で伺ってきた声をもとに、その構造的な原因を3つに整理します。
手作業による加工作業は、どうしても作業者のスキルや体調に左右されます。特に、加工用の果物はスーパーに並ぶような綺麗な形のものばかりではありません。変形果や表面の凹凸が大きい個体を一定の薄さでむくには、熟練の技術が必要です。
また、長時間に及ぶ加工作業も要因の一つです。
「1日中同じ作業を続けていると、誰でも疲れがたまりますよね。疲労がピークになると集中力が切れ、『歩留まり』よりも『早く処理すること』が優先されてしまい、結果として皮むきが雑になってしまうんです。」
業務用の現場で最も恐れられるのは、納品先や消費者からのクレームです。特に「皮のむき残し」は、異物混入と同様に厳しい目で見られることがあります。
「加工後の製品に少しでも皮が残っていると問題になる」という心理的プレッシャーから、作業者は無意識のうちに「念のため、もう少し深くむいておこう」という判断をしてしまいます。この「安心のための数ミリ」の積み重ねが、工場全体で見ると膨大な量の過剰除去につながっているのです。
土壌由来の菌や残留農薬への懸念から、表面を大きく除去するケースもあります。
確かに衛生管理は最優先事項ですが、本来は洗浄や殺菌プロセスで解決すべき問題を、カッティング(除去)で解決しようとすると歩留まりは悪化します。必要な安全マージンと、過剰な除去の境界線を見極めることは、手作業の感覚だけでは非常に困難だと言えます。
歩留まりの観点を一段深く掘り下げたい方は、業務現場の食品ロス削減について、過剰除去・歩留まり管理・運用標準化の3点で整理した記事もあわせてご覧ください。
過剰除去は、単なる「もったいない」という精神論の問題ではありません。経営視点で見れば、「仕入れコストの浪費」と「廃棄コストの増大」というダブルパンチで利益を削る要因となります。
ここでは、過剰除去の影響を具体的な数値で計算してみましょう。
まず、加工の効率を表す指標として「歩留まり率」があります。過剰除去が多いほど、この歩留まり率は低下します。
歩留まり率(%) = ( 加工後の製品重量 ÷ 原材料の重量 ) × 100
例:1kgのパイナップルを皮むきして、可食部が600g残った場合
( 0.6kg ÷ 1.0kg ) × 100 = 歩留まり60%(除去率40%)
機械化のメリットはスピードだけではありません。経営に直接響くのが「歩留まり(可食部として残る割合)」の向上です。
特にパイナップルのように皮が厚く硬い果物は、手作業だとどうしても厚くむいてしまいがちです。また、一般的な「筒状カッターで打ち抜くタイプ」の機械も、芯と外皮を大きく削ぎ落としてしまうため、実は手むきと変わらない歩留まりしか出せません。
しかし、食材の表面をなぞるようにむく「電動ピーラー方式」なら、結果は大きく変わります。
同じ量のパイナップルを仕入れても、製品として売れる部分が1.5倍に増えるということです。これは、廃棄コストの削減と売上アップの両方に直結する、非常に大きな差となります。
関連記事:【果物の皮むき工程】歩留まりを20%改善する方法|原因と3つの具体策
また、こうした過剰除去の削減は、社会的信用を高めることにも繋がります。
農林水産省の分類においても、加工・製造段階で発生する食品のロスは「事業系食品ロス」として削減が強く推奨されています。
適切な機械を選定することは、利益確保だけでなく、企業のSDGs活動(食品ロス削減)としての側面も持っているのです。
過剰除去の恐ろしい点は、材料費が無駄になるだけではないことです。
除去した皮や芯は「事業系一般廃棄物」や「産業廃棄物」として処理する必要があり、ここにもコスト(処理委託費)がかかります。つまり、「お金を払って仕入れたものを、お金を払って捨てている」状態です。
過剰除去を減らすことは、仕入れコストの圧縮と廃棄コストの削減を同時に達成できる、最も確実な利益向上策と言えます。
では、現場で過剰除去を防ぐためにはどのような対策が有効なのでしょうか。精神論に頼らず、仕組みで解決するための3つのアプローチをご紹介します。
まず行うべきは、「その除去は本当に必要か?」という基準の見直しです。
現場では、過去のクレーム事例などから基準が年々厳しくなり、必要以上に安全マージンを取りすぎているケースが多々あります。「皮は完全にゼロにする」のではなく、「製品の品質に影響しない範囲を見極める」ことが重要です。写真付きの限度見本を作成し、「ここまでなら許容範囲」というラインを可視化することで、作業者の迷いや過剰な除去を減らすことができます。
使用する原材料のサイズを揃えることも一つの手段です。サイズがバラバラだと、機械や手作業の設定調整が難しくなり、小さい個体に対して深くむきすぎてしまうミスが起こりやすくなります。
ただし、規格の揃ったA品ばかりを仕入れると原材料コストが跳ね上がってしまいます。コストダウンのためにあえて不揃い品(規格外品)を使用する場合は、次の「機械化」の工夫が不可欠になります。
最も確実かつ効果が高いのが、加工プロセスの機械化です。最新の自動皮むき機には、過剰除去を解決する以下のようなメリットがあります。
実際に、手むきでは40%程度だった歩留まりが、機械化によって60%以上に改善した事例もあります。「誰がやっても同じ結果が出る」という再現性の高さこそが、機械化最大の強みと言えるでしょう。
刃の当たり量や搬送条件を一定に保てる業務用の自動皮むき機を導入すると、作業者ごとの差による過剰除去を抑えやすくなります。導入を検討する場合は、処理する食材と現場規模に合わせて業務用自動皮むき機の製品一覧から仕様をご確認ください。
機械選定と並んで衛生水準の確保も導入判断の要となります。HACCP対応の運用設計と皮むき工程の機械洗浄性をまとめた記事も参考にしてください。
本記事では、食品加工現場における「過剰除去」の原因とその対策について解説しました。
過剰除去は、現場のスタッフが「良かれと思って(またはクレームを恐れて)」行っているケースが多く、個人の努力だけでは改善が難しい課題です。しかし、経営視点で見れば、それは確実に利益を削り取る要因であり、年間で見れば数百万円規模の損失につながることもあります。
重要なのは、以下の3点です。
特に、最新の皮むき技術を活用すれば、これまで「加工しにくい」と敬遠されていた変形果や規格外品も、高い歩留まりで商品化できるようになります。
過剰除去を減らすことは、単なるコスト削減にとどまりません。貴重な食資源を無駄なく使い切ることは、SDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任 つかう責任」への貢献そのものです。適正な除去率の管理は、企業の利益と地球環境の両方を守る「攻めの経営戦略」と言えるでしょう。
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